Flaneur-フラヌール-

50代からのSecond Life

ファンタジーな記憶

隣町に年老いた両親が暮らしています。

88歳の父と、86歳の母

昨年夏、母が健康診断で引っかかり

何回かの精密検査の後

肺がんと診断されてしまいました。

 

兄が少し離れたところに住んでいるので

その最期の診断の時「悪いけどいっしょについていってくれないか」と電話があり

がんセンターで医者の話を聞いたのが私でした。

 

なぜ、兄が私にいっしょにいって欲しいと電話をかけてきたかと言えば

その頃、父はかなりもの忘れがひどくなっていたようです。

母からの電話でそのことを知ったそうです。

私も時々は実家に行っていたのですが

話しをしている時は、いたって普通なので気がつきませんでした。

 

病院で聞いてきたことや、なぜ病院に行ったかとか

母がなんで外出しているのかわからなくなって探してみたり

特段、他人に迷惑をかけるわけでもないのですが

少し前の記憶が飛んでしまっていることが多くなっていました。

 

それから、月に2度ほど、母を病院へ連れていくようになりました。

母が病院へ行っている間、父はじっと家でこたつに入って待っています。

自分で食べ物を用意したり、買い物に行くような人ではないし

エアコンの操作も満足にできないような父なので、本当にじっとしているのです。

 

これは後から母に聞いた話しです。

ある土曜日、同じように母を連れて病院へ行っていた時

どうも父は、私と母が出かけた後、思い立って車を運転して

昔、自分が勤務していた隣町の中学校を目指したようです。

ただ、道もだいぶ変わってしまっていて迷ってしまい

大きな公共のホールのようなところに辿り着いたところで

駐車場に車を止め、そのホールの中に入っていったそうです。

特に管理している人もいなくて

中へ進むと

椅子がだんだんに並んでいたということですから

音楽や演劇なんかを行うようなホールだったのでしょうか。

 

ホールの中を歩いていると、ひとりの男性が話しかけてきたそうです。

しばらく会話をした後、その男性は

「このホールを借りにきた」というようなことを言って

帰ろうとした時に、「ありがとう」と言って

5千円札を2枚、椅子の上に残して消えてしまったということです。

 

父は戸惑いつつも、その5千円札2枚を持って家に戻ってきて

忘れないようにと、封筒に入れて、わざわざ封筒に1万円と記し

自分の名前を書いて

引き出しにしまったのでした。

 

私たちが病院から帰ってきた時には

出掛けた素振りもみせず、こたつに入っていました。

ただ、今にして思うと、こたつが温まっていなくて

「電源が切れていたのか?」「寒くなかったの?」

とか父に聞いた記憶があります。

 

その数日後、母が引き出しの封筒を見つけてビックリして

父に問い詰めたところ、この事がわかったようです。

もうところどころ記憶が飛んでいるので

もはやそれ以上は突き止めることはできません。

それを聞いて、なんとも夢のような、ファンタジーな話しだと

おかしくなってしまいました。

 

友人たちに会うと結構、親のどちらかが痴呆になっている話しを聞きます。

ある友人の母は徘徊したり、訳のわからないことを言ったりするようになり

用をたすのも自分ではできなくなって

ある朝、弱々しくなって病院に運ばれ亡くなったと言っていました。

その友人から

「早く病院に連れていった方がいいよ、遅らせる薬あるから」

とアドバイスをもらいました。

でも、いろんな本を読み漁り

結論としては、そのままそっとしておくことにしました。

薬が万能ではないようですし、副作用で逆にひどくなることもあるようだし

一番は、本人が嫌なのだろうなと思うのでした。

 

歳も歳だし、もの忘れに目くじら立ててイライラ、ハラハラするよりは

実家に帰った時に、冗談言いながら楽しく過ごした方がいいのかなと。

 

おかげさまで、高齢で手術をする体力もない

抗がん剤も副作用に耐えられない、打つ手なしと言われた母の肺がんは

今のところ停滞気味で

ここ数カ月は、レントゲン写真に動きはありません。

 

このまま静かに穏やかに時間が過ぎることを祈っています。

 

本日も日々の備忘録のようなブログに

おつきあいいただき、ありがとうございます。